1999 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内共生系における二成分型情報伝達機構に関する研究
Project/Area Number |
10680598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森岡 瑞枝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20272461)
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Keywords | 細胞内共生 / シンビオニン / 二成分型情報伝達機構 / リン酸基転移機構(PTS) / 糖質輸送 / HPK / HPr / ptsH-ptsl-crr |
Research Abstract |
アブラムシの細胞内共生バクテリア(ブフネラ)が合成するシンビオニンは、自己リン酸化活性・リン酸基転移活性を有する。この意味でシンビオニンの果たす機能は二成分型情報伝達機構の"センサー分子=HPK"、あるいは、糖質輸送に関与するリン酸基転移機構(PTS)の"HPr"の機能を想起させるが、シンビオニンとこれら2種のタンパク質の間にアミノ酸配列上の類似性は全くない。本年度は、大腸菌のような自由生活型バクテリアにみられるタイプのHPKおよびHPrがブフネラにも存在するか否かを遺伝子レベルで解析し、以下の成果を得た。 1.大腸菌hpkの保存配列を基にPCRプライマーを設計し、ゲノムDNAを鋳型とし、64通りのdegeneratePCRを行ったが、ブフネラからはhpkに対応するPCR産物は得られなかった。この結果は、ブフネラにおいては、通常の大腸菌型HPKに替わり、シンビオニンが二成分機構・センサー分子として機能する可能性を示唆する。 2.大腸菌のHPrをコードするptsHの部分配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションにより、ブフネラゲノム上にも相同遺伝子が存在することを見出した。さらに、PCR法により、ptsHの全長をクローニングしシーケンスした結果、ptsHは、ptsl(フォスフォエノールピルビン酸(=PEP)からリン酸基を受容し更にHPrへリン酸基を受け渡すEnzymelをコードする遺伝子)およびcrr(HPrからリン酸基を受け取るグルコース特異的Enzymellをコードする遺伝子)とともにオペロンを形成していることを明らかにした。更にRT-PCRにより、これら3種の遺伝子は、ブフネラ細胞中で活発に転写されていることを確認した。 3.大腸菌を用いブフネラptsH、ptsl、crrの大量発現系を構築した。発現タンパク質中、Enzymelに自己リン酸化活性が検出されたことから、ブフネラにおいてもPEP-依存型糖輸送系が機能している可能性が示された。
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