1999 Fiscal Year Annual Research Report
球状ウィルスの高分解能立体構造に基づくアセンブリー機構の解析
Project/Area Number |
10680634
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福山 恵一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80032283)
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Keywords | タバコネクロシスウイルス / X線結晶解析 / ウイルスの立体構造 / 蛋白間相互作用 / アセンブリー機構 |
Research Abstract |
タバコネクロシスウイルス(TNV)は一本鎖RNA(1.3x10^6Da)をゲノムとして持つ球状ウイルスであり、アカザ・ナス・マメ・ユリ科などの植物に感染し、壊疸症状を起こす。TNVでは、276アミノ酸残基からなるコート蛋白が180個集合し、いわゆるT=3の正20面体対称を持つキャプシドを形成している。このサブユニット蛋白は一次構造上一種類であるが、3種類の立体構造をとることによって、少ない遺伝情報で必要なサイズのウイルス殻を形成している。TNVの結晶は立方晶系、空間群P4_232で、単位格子(a=336.4Å)中に2つのTNV粒子が含まれる。回折データは、フォトンファクトリー(BL6A)の放射光とワイセンベルクカメラを用いて収集し、2.25Å分解能の回折データを得た。分子置換平均化法で構造決定し、X-PLORで構造を精密化した(RNAの電子密度は見えない)。サブユニット蛋白はゼリーロールバレル構造をコアとして持っている。A・B・Cの3つのサブユニットのコアの3次構造は互いによく似ているが、Cサブユニットは他のサブユニットよりN末端側に約30残基多くオーダーしている。この部分(アーム)が3つのサブユニット間で最も大きく異なる点で、このアーム領域がサブユニット蛋白間の相互作用に多様性をもたらしている。第一には、アームは5回軸および3回(疑似6回)軸周りのサブユニットの2種類の集合様式とらせている。すなわち、アームは3回対称軸に集まり、β-annulus構造を形成しており、この点が5回軸周りのサブユニットの配置と異なる。第2に、アーム部分はC/CとA/Bのサブユニット間相互作用にも差を生じせしめ、C/Cインターフェイスには、他のサブユニットインターフェイスに存在していたCa^<2+>イオンが無く、またサブユニット間水素結合様式も異なる。T=3ウイルスでも、ウイルスの種類によってサブユニット間相互作用の様式が多様であることがわかった。
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