1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10680666
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小出 寛 東京工業大学, 生命理工学部, 寄附講座教員 (70260536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上代 淑人 東京工業大学, 生命理工学部, 寄附講座客員教授 (90012690)
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Keywords | 癌遺伝子 / タンパク質 / 分子生物学 / 生化学 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
R-RasはRasと同様にIL-3依存性プロB細胞由来BaF3細胞のIL-3除去による細胞死を抑制するが,Rasの場合は単独で抑制できるのに対して,R-Rasの場合にはIGF-1の共存が必須である.本研究ではまずこのような相違点を生む原因を調べた.その結果、BaF3細胞においてR-RasはAktを活性化できるが、MAPキナーゼ(MAPK)は活性化できないことを見いだした。一方,IGF-1はAktをあまり活性化しなかったが,MAPKは活性化した。またR-RasとIGF-1は協同的に細胞死抑制因子Bcl-xLの発現を上昇させ、細胞死促進因子caspase-3の活性化を抑制した。これらのことから、R-Rasによって活性化されたAktとIGF-1によって活性化されたMAPKが、共同してBcl-xLの発現上昇やcaspase-3の活性抑制を誘導することによって、BaF3細胞の細胞死を抑えていると思われる。つまり、BaF3細胞の細胞死の抑制におけるRasとR-Rasの違いは、Rasが細胞死抑制に重要なAktとMAPKの両方を活性化できるのに対して、R-RasはAktしか活性化できない点にあると考えられる。また、本研究ではRalか、Rasによって誘導される足場非依存性増殖に関与していることも見いだした。N-rasに活性型変異を持つHT1080細胞は足場がない状態でも増殖できるが、この増殖はRalの活性型変異体を発現させると著しく促進された。逆にRalの優勢抑制型変異体を発現させると、足場非依存性増殖は抑えられた。HT1080の足場非依存性の増殖がN-rasの活性型変異に依存していることから考えて、この結果はRasの下流でRalが足場非依存性増殖に関与していることを示唆している。現在、Ralがどのようにして足場非依存性増殖へ関わっているのか、その機構についての解析を進めている。
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