1998 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜形成阻害から核への情報伝達経路における酵母変異株の解析
Project/Area Number |
10680671
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水田 啓子 広島大学, 工学部, 助教授 (40166012)
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Keywords | 細胞内輸送 / リボソーム生合成 / 転写調節 / リボソーム蛋白質遺伝子 / 酵母変異株 |
Research Abstract |
酵母において蛋白質の細胞内輸送(分泌)経路が遮断されると、リボソーム構成成分遺伝子群の転写が特異的に著しく抑制されることを見出し発表した。リボソーム上で蛋白質が合成されて小胞体に入る段階から細胞膜へ移行する最後の段階まで分泌経路のいずれの段階を遮断してもこの転写抑制がおこることから、細胞膜形成阻害が何らかのシグナルとなり、それが核まで情報伝達されると推定している。本研究では細胞増殖の制御メカニズムの一つとして、細胞内情報伝達系に異常のある酵母変異株を解析することにより蛋白質の合成系と細胞膜合成系との間の制御関係を明らかにすること、すなわち分泌経路が遮断されることによりリボソーム蛋白質遺伝子群の転写が抑制されるに至るシグナルおよび核への情報伝達機構を解明することを目的とする。 リボソーム蛋白質遺伝子のプロモーター制御下にあるHIS3をレポーター遺伝子として含むプラスミドを形質転換した酵母温度感受性分泌変異株sly1(his3^-)から、制限温度においてもリボソーム蛋白質遺伝子の転写が抑制されない二重変異株(すなわち情報伝達系に異常のある株)をスクリーニングし、数個の変異株を取得した。そのうちの1つは低温感受性を示したので、それを指標にして変異をもっている遺伝子を酵母染色体DNAライブラリーからクローニングした。得られた遺伝子のDNA塩基配列の一部を決定しデータベースを検索したところ、新規の遺伝子であった。遺伝子を破壊した株は生育できず、本遺伝子は必須遺伝子であることが分かった。変異遺伝子はORFの中ほどに停止コドンへの変異があり、野性型蛋白質の約1/2の分子量の蛋白質が発現していた。現在本遺伝子の機能ならびに本遺伝子を介するシグナル伝達系について解析中である。
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