1998 Fiscal Year Annual Research Report
自律神経機能維持に関与する基底核・視床・皮質神経回路
Project/Area Number |
10680699
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大竹 一嘉 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (10168966)
|
Keywords | 自律神経機能 / TRH / (中隔)側坐核 / 大脳皮質 / 視床 / 孤束核 / c-fos / ラット |
Research Abstract |
甲状腺ホルモン放出因子(TRH)を中枢内に投与すると、抗うつ作用、体温上昇、血圧上昇などの、さまざまな生理学的、行動学的変化を引き起こすことが臨床的あるいは動物実験により報告されているが、TRHが中枢内でいずれの部位に作用して、それらの作用を引き起こすのかに関しては正確には解明されていない。われわれは、神経活動の指標として一般的に用いられているFosタンパクに対する免疫組織化学法を用いて、TRHの中枢内作用部位を特定することを試みた。実験には、SD系雄ラットを用い、TRHを側脳室内に投与して適当な生存時間を経過したラットの脳のFos免疫陽性細胞の分布を、対照群の脳のFos免疫陽性細胞の分布と比較した。Fos免疫陽性細胞は、TRH投与後約2時間でピークに達し、以後減少した。TRH投与ラットと対照ラットとのFos免疫陽性細胞の分布の違いは主として辺縁-自律神経性機能に関与する部位において観察された。すなわち、TRH投与ラットでは、内側前頭前皮質の辺縁前および辺縁下領域のV/VI層、視床正中核腹側部、孤束核およびその周囲の網様体においてFosの選択的な発現が見られたが、他の大脳皮質の大部分(II/III層)、中隔側坐核のshell領域、内側扁桃体核、視床下部の一部、中脳中心灰白質においては、著明なFos発現の抑制が認められた。これらのデータは、TRHの中枢内投与によるさなざまな行動学的・自律神経的反応は、上述の辺縁-自律神経性機能に関与する部位より構成される神経回路網によって引き起こされることが示唆された。
|