1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10680775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 晴次 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10161366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 泰弘 東京大学, 力学院・農学生命科学研究科, 教授 (80109975)
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Keywords | カニクイザル / 霊長類 / 脳 / 神経細胞 / 初代培養 / 凍結保存 |
Research Abstract |
目的:繁殖、飼育に特殊な技術を要する霊長類由来の胎仔は稀少性の高い研究材料であり、新鮮な大脳組織を頻繁に入手することは非常に困難である。そこで本研究では、カニクイザル胎仔大脳神経細胞初代培養を安定して作出、供給し、必要に応じて初代培養を行なえる技術を開発することを目的とした。 方法:これまでにラット胎仔を用いた凍結保存技術の確立、カニクイザル胎仔大脳神経細胞初代培養の材料としての最適胎齢、初代培養の条件等を決定した。これらの結果をふまえて胎齢80日胎仔凍結大脳由来の神経細胞初代培養において、免疫細胞化学的観察、経時的形態観察、さらに新鮮材料由来初代培養との比較により凍結保存の影響を検討した。次に凍結組織由来細胞の高密度培養下でCa2+シンクロナスオシレーションを観察した。 結果:初代培養下において、脳細胞は類円形の細胞体に数本の突起を有すMAP-2陽性細胞と平坦で増殖性が見られるMAP-2陰性細胞に大別された。前者は神経細胞で後者はグリア細胞と考えられる。今回の検索ではグリア細胞の種類の特定にまではいたらなかった。MAP-2陽性である神経細胞は培養3日目には突起を伸長し、7日目には非常に複雑な突起網を形成した。培養90日目においても神経細胞は生存していた。MAP-2陰性であるグリア細胞は培養日数につれその数を増し培養14日目には培養面に単層を形成し90日には全面を占めていた。これらの変化は以前報告したラット由来の初代培養とほぼ同様であった。高密度培養14日目にはCa2+シンクロナスオシレーションが観察された。新鮮材料由来、凍結保存由来の初代培養下神経細胞については形態レベルでは差が見られなかった。 考察:霊長類由来の神経細胞初代培養も形態的にはラット等齧歯類由来のそれと同様な振る舞いが見られたことから、神経細胞に対する毒性の定性的、定量的評価など従来齧歯類で汎用されていた評価系をこの系で用いる事が出来る。ラット胎仔初代培養下神経細胞でもCa2+シンクロナスオシレーションが見られ、これはNMDAを神経伝達物質としてシナプスを介した神経細胞の発火に起因しその頻度はシナプスの量に比例することが知られている。今回我々が観察した現象も同様の機序で発生していると考えられる。この現象を評価系として利用すれば、単個細胞への影響ばかりでなくシナプスを介した神経細胞間ネットワーク形成能への影響も評価できる。また、新鮮材料由来の初代培養と形態的に差が見られなかったことは凍結保存という技術の有効性を示唆している。
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