1998 Fiscal Year Annual Research Report
現代福祉社会における人間科学と主体性にかんする研究
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10710010
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Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
古賀 徹 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助教授 (30294995)
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Keywords | 現象学 / アドルノ / アーレント / ハンセン病 / 社会福祉 / 環境倫理 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、(1)従来の研究で不十分であった領域への文献的・思想史的研究、(2)現代社会における教育・福祉の現状にかんする調査、の二つの領域で一定の蓄積を見ることにあった。 (1)にかんしては、英米系の現代倫理学についての基礎的研究を開始するとともに、従来より研究を進めていた思想家(アドルノ、アーレント)については、一応の研究成果をとりまとめ、雑誌論文というかたちでその一部を発表することができた。アドルノにかんしては哲学的考察の社会理論への展開可能性について、またアーレントにかんしては、哲学的(現象学的)反省の複数化の必然性について明らかにできた。これらの文献研究は、哲学的考察を通じて人間科学に体系的な基礎を与えるための礎石的研究ということができる。 他方(2)にかんしては、ハンセン病についての近代日本の公衆衛生政策について研究を行った。ハンセン病にかかわる問題系は、功利主義やリベラリズムを主軸とした伝統的な社会福祉思想に根本的な反省を迫るものであり、とりわけ隔離収容の思想は、現代の社会福祉思想をリードするノーマライゼーションの考え方それ自体をも新たに検討させる射程を保持している。各種文献の調査はもちろんのこと、現実の療養所における聞き取り調査、国家賠償請求訴訟の傍聴などを通じて、収容をめぐる数々の問題について倫理学的考察を行うための資料を収集した。 最終年度にあたる来年度には両者を総合し、著作化することを目標とする。
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