1998 Fiscal Year Annual Research Report
処理負荷の半球間での不均衡が両半球分配優位性に与える影響
Project/Area Number |
10710033
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
吉崎 一人 愛知淑徳大学, 文学部, 助教授 (80220614)
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Keywords | 半球間相互作用 / 両半球分配優位性 / 処理負荷 / 大脳半球機能差 |
Research Abstract |
2つの情報を統合処理する際に,片側大脳半球(視野)だけに2つの情報を投入する場合に比べ,各半球(視野)に分けて情報を投入する場合の方が処理の効率がいいことがある.これを両半球分配優位性という.処理負荷が高い場合では,片側半球での処理では効率的でなく,両半球に分配されると各半球で処理が並行して行われるため効率的な処理が行われると考えられる.もしこれが正しいなら,処理負荷の半球間のバランスが不均衡な場合には,処理負荷が高い課題においても両半球分配優位性が得られないことが予想された.そこで以下に示す2つの実験では,処理負荷の半球間での不均衡を操作した課題における両半球分配優位性を測定した.結果は予想通り,半球間での処理負荷が不均衡な場合には両半球分配優位性は認められなかった. 実験1では,名称判断課題(タ-た)と母音課題(あ-タ)を右利き大学生に与えた.例えば「タ-た」が同じか異なるかの判断が要求される.形態と音韻処理の2過程が想定される.母音課題では文字対において共通の母音が含まれるか否かの判断を要求するものであった.文字対の1つは母音であった.例えば「あ-タ」の場合,「タ」から母音を抽出するには,形態,音韻,母音抽出,の3つの処理過程を必要とする.これに対して「あ」から母音を抽出する場合は,形態判断と音韻判断の2つである.この課題において両視野提示条件の場合,半球間での行われる処理ステップに不均衡が生じることになる.この課題は処理ステップの視点からすると,名称判断課題よりも処理負荷が高い.結果は,処理負荷が比較的高い母音課題で両半球分配優位性が認められず,名称判断課題では従来通りの両半球分配優位性が認められた.実験2では,未知の文字に音を連合させ連合の強度を変えることで処理負荷の半球間でのバランスを操作した.その結果,負荷のバランスが悪い時に両半球分配優位性は認められなかった.
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