1998 Fiscal Year Annual Research Report
児童期の数学的概念の発達における方略変化のメカニズム
Project/Area Number |
10710040
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
藤村 宣之 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (20270861)
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Keywords | 方略変化 / 方略発見 / 内包量 / 比例的推理 / 教授介入 / コンピュータ / 数学的概念 / 児童 |
Research Abstract |
本研究では,児童にとって理解の難しい内包量や比例といった数学的概念について,その発達を課題解決における方略の変化の観点から明らかにした。本年度は特にコンピュータを用いた介入による方略変化を中心に検討した。 コンピュータを用いた二種類の介入により既有の方略がどのように変化するかを明らかにするために,小学校3年生38名に対して,内包量比較課題(事前課題)→コンピュータを用いた介入(方略発見条件または方略活性化条件)→内包量比較課題(事後課題)の順に課題を実施した。介入場面ではコンピュータの画面上で比例的推理を行わせ,方略発見条件では色の濃さを,方略活性化条件では色の濃さと分布密度的表示をそれぞれ手がかりとして正しい値を予測させた。各条件には半数ずつを割り当てた。実験の結果,1)介入場面の遂行については,方略発見条件に比べて方略活性化条件で,単位あたりに依拠した適切な予測へと速く移行する傾向がみられた。また,2)事後課題においては,両条件とも適切な方略の使用が事前課題よりも増加したが,方略発見条件で単位あたりのほか倍数関係にも依拠した多様な方略への変化が見られたのに対し,方略活性化条件における方略の変化はほとんどが単位あたりに依拠した方略への変化であった。なお,平成11年度において,同一児童に対して内包量課題を実施し,6ヶ月後および1年後における方略の長期的変化を検討する予定である。 また,関連する知識の発達にともなう方略の縦断的変化を検討するために,小学校3年生32名に対して,速度に関する比例的推理を測定する課題等を実施した。その結果,増加方向の推理に比べて減少方向の推理では単位あたりに依拠した方略の使用が少なく,加法に依拠した方略が多く用いられることなどが明らかになった。平成11年度にも同一の課題を実施し,方略の縦断的変化を検討する予定である。
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