1999 Fiscal Year Annual Research Report
児童期の数学的概念の発達における方略変化のメカニズム
Project/Area Number |
10710040
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
藤村 宣之 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (20270861)
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Keywords | 方略変化 / 方略発見 / 内包量 / 比例的推理 / 授業 / 教授介入 / 児童 / コンピュータ |
Research Abstract |
本研究では,児童にとって理解の難しい内包量や比例といった数学的概念について,その発達を課題解決における方略の変化の観点から明らかにした。本年度は特に,1)コンピュータを用いた介入による方略の短期的・長期的変化と,2)教室場面での学習による方略変化について検討した。 第一に,コンピュータを用いた介入による方略変化を明らかにするために,小学校4年生31名に対して,内包量比較課題(事前課題)→コンピュータを用いた介入(定性的手がかり条件または定量的手がかり条件)→内包量比較課題(事後課題:直後)→内包量比較課題(遅延課題:5ヶ月後)の順に個別実験により課題を実施した。介入場面ではコンピュータの画面上で比例的推理を行わせ,定性的手がかり条件では色の濃さを,定量的手がかり条件では色の濃さと分布密度表示をそれぞれ手がかりとして正しい値を予測させた。各条件には半数ずつを割り当てた。実験の結果,事後課題では,定性的手がかり条件で倍数操作方略と単位あたり方略の適応的選択への変化が多くみられたのに対し,定量的手がかり条件では単位あたり方略の一貫した適用への変化が多くみられた。遅延課題では,定性的手がかり条件で単位あたり方略が維持される場合と他の方略へ変化する場合に二分されたのに対し,定量的手がかり条件では単位あたりの一貫した適用の多くが倍数操作と単位あたりの適応的選択へと変化した。 第二に,教室場面での学習による方略変化について明らかにするために,小学校5年生24名に対して,算数の「割合」単元の導入前後にシュートのうまさや児童数の減り方を比較する課題を実施した。その結果,1)事前課題から事後課題にかけて加減法による方略から倍に依拠した方略への変化がみられ,2)授業時の解法の発表を通じて倍の考えに気づいた児童において事前から事後にかけての方略変化が生じやすいことが明らかになった。
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