1999 Fiscal Year Annual Research Report
科学的知識を得ることによる日常的知識のとらえ直しの過程とその促進要因の解明
Project/Area Number |
10710042
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 伸子 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (40293188)
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Keywords | 科学的概念 / 日常的概念 / 日常経験 / 科学的概念と日常経験の統合 / 概念変化 |
Research Abstract |
本研究では,科学的概念を得ることによって,それと矛盾する日常的概念を中心とする知識体系がどのように変化するのかを明らかにすることが目的であった.題材として「地球は丸い」「球面の至るところに人間や事物が存在する=ものは下に落ちない場合がある」の二つの命題からなる地球の形についての科学的概念,「地面は平らである」という日常的概念,「地面は平らに見える」という日常経験を取り挙げた.本年度は研究2として,次の二つの実験を行った.<第1実験>本実験では成人がどのような思考プロセスを経て日常経験と科学的概念の間の矛盾を解消し統合するかを検討した.文系大学生・大学院生20名を対象に「地球は丸いのに,地面が平らに見えるのはなぜか」という質問に答えてもらい,その後,答えを導き出すまでに生じた思考プロセスを詳細に説明してもらった.その結果,20名中17名の被験者は,いきなり地面の見え方の変化を説明する一般的原理(具体的な状況を超えて一般的に適用可能な一原理;「地球のほんの少しの部分しか見えないときは地面は平らに見え,多くの部分が見えるときは丸く見える」)を使用して統合することはなく,最初は1)地面の見え方の変化を説明する個別的原理(地面の見え方が変化する具体的な状況を個別的に説明する個別的原理;「地球からの距離によって地面の見え方は変化する」「地球の大きさによって地面の見え方は変化する」「地球上の人の大きさによって地面の見え方は変化する」)を使用して矛盾を解消し,次に2)1)のプロセスを一般的原理を使用して説明しなおすというプロセスを踏む被験者が多いことが示された.<第2実験>本実験では,地面の見え方の変化を説明する一般的原理の導入が子どもにとっては困難である原因について明らかにするために,小学校1年生から3年生の児童約30名を対象に実験を個人実験を行った.その結果、多くの子どもは,(1)円や球の一部の曲率を過大視し,(2)大きさが異なっても円や球の曲がり具合は同じ,という強いバイアスを持っていることが明らかになった.このことから,一般的原理の導入の困難性の一つの要因として,子どもが球や円について,一般的原理と矛盾する誤った知識(球や円は,常に丸さは同じ)を持っており,それが影響を及ぼすと推測される.
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