1998 Fiscal Year Annual Research Report
親密な対人関係における他者配慮・親和欲求と自己専心のジレンマ
Project/Area Number |
10710059
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
片山 美由紀 常磐大学, 人間科学部, 講師 (50265229)
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Keywords | 親密性 / 対人関係 / 介護 / 育児 / ジレンマ / 余暇 / 他者配慮 / 自己専心 |
Research Abstract |
本研究でいう自己専心行動とは、他者への配慮無しに自己の関心事に専念し、あるいは自己の権利を追究する行動のことである。このような行動は個々人の成長および拡大につながる一方で、親密な対人関係の形成や維持にとってはマイナスにはたらく場合があり、対人間ジレンマの源泉となる。本研究ではこのような現象に関して、理論的知見と実態把握的知見の両輪による研究をすすめている。 これらの現象が生起するフィールドとして、本研究では育児、高齢者介護、看病、そして一般の家庭の休日場面をとりあげており、各種の印刷資料、視聴覚資料、統計的資料、および研究者自身によるインタビュー調査、質問紙調査により、実証的研究がすすめられている。 前述のような場面においては、ケア役割を担う者にとっては他者配慮の規範が優位である。しかし一方でこれらの場面は、ケアを受ける役割を自認する者にとっては、自己専心の規範、言い換えれば自己専心の権利意識が先鋭化する。そしてDumazedierの指摘するような余暇活動(休息・気晴らし・自己啓発)が積極的に求められることになる。さらに自己専心、この場合には余暇活動の権利意識(deservingness)の存在が、本研究で問題とするようなジレンマの解決を困難にしていることも見いだされている。道徳判断の研究におけるKohlbergとGilliganの論争に代表されるような基底的な対人価値観の差異が、親密な対人関係において解決しがたい問題の原因として遍在することが繰り返し確認されているのである。ジレンマのメカニズムの詳細については今後さらに検討をすすめる予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 片山美由紀: "親密な小集団からの逸脱としての余暇活動-余暇の過ごし方に関する嗜好と本人の適応感" 日本社会心理学会発表論文集. 39. 150-151 (1998)
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[Publications] 片山美由紀: "痴呆症・寝たきり高齢者在宅看護における介護者の負担の構造-直接介護者にかかる「8段の重石」モデルの提唱-" 日本心理学会大会発表論文集. 62. 945-945 (1998)
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[Publications] 片山美由紀: "大学生及びバーンアウトの看護婦における仲間集団からの引きこもり-ソーシャル・サポートとしての"非干渉"の意義" 日本グループ・ダイナミックス学会発表論文集. 46. 178-179 (1998)
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[Publications] 片山美由紀: "Mobile telephone use and pager use in contemporary Japan;Communication network maintenance or privacy seeking?" 国際応用心理学会(IAAP)発表論文. 24. (1998)
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[Publications] 片山美由紀: "育児期における母親の他者配慮傾向と父親の自己専心傾向のジレンマ" 日本心理学会発表論文集. 63. (1999)
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[Publications] 片山美由紀: "The tendency of seeking enjoyment and intimate relationships during nursing period" ヨーロッパ心理学会発表論文. 6. (1999)
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[Publications] 片山美由紀: "パッケージ・性格の心理<改訂版>(共著)" ブレーン出版, (1999)
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[Publications] 片山美由紀: "高校生のための心理学(共著)" 大日本図書, (1999)