1998 Fiscal Year Annual Research Report
集団間コンフリクト状況における集団内非寛容に関する実証的研究
Project/Area Number |
10710060
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
神 信人 淑徳大学, 社会学部, 講師 (30296298)
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Keywords | 集団間コンフリクト / 社会的ジレンマ / サンクション / 集団凝集性 / 規範 |
Research Abstract |
平成10年度は、集団間コンフリクト状況における集団内不寛容の効果を検証する実験を実施した。具体的な実験状況としては、集団間コンフリクトの構造モデルであるダブルジレンマ状況(ダブルジレンマ条件)と同じ集団内利得構造の社会的ジレンマ状況(社会的ジレンマ条件)を設定し、二つの状況におかれた被験者の協力傾向を測定した。さらに集団成員に集団内の非協力者あるいは協力者を罰する(マイナスの利得を加える)機会が与えられている場合(集団内相互作用あり)と、与えられていない場合(集団内相互作用なし)の二つの状況を設定した。実験の結果、ダブルジレンマ条件では、社会的ジレンマ条件より高い協力率が示された。協力率における集団内相互作用有無の効果は認められなかった。ただし他メンバーの協力率を予測させる場合には、集団内相互作用の効果が認められ、集団内相互作用がある場合のほうが高い協力率を予測されている。つぎに集団内不寛容の尺度である「罰の行使率」についてであるが、社会的ジレンマ条件とダブルジレンマ条件間で差は認められなかった。「他の被験者はどれくらい罰を行使するか」の予測ではほぼ正確な予測が行われていた。罰の方向については、ジレンマにおける協力者が非協力者よりも罰を行使する傾向を示すこともあり、非協力者への罰が全体の7割近くを占めた。以上のように、集団内相互作用の存在は、非協力者への罰の予測を高め、結果として集団内協力を上昇への期待をもたらした。本来、ダブルジレンマのパレート解は全員非協力であり、導入された相互作用も中立的なものであったのにも関わらず、実際に行使されたのは非協力者への罰ばかりになったということは、集団コンフリクト状況における認知的制約の存在を示唆していると考えられる。
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