Research Abstract |
本年度は,昨年度作成した実験課題を基に,高齢者群と大学生群を対象に,反応の抑制が関わる諸課題を実施した.一般に反応の抑制が機能する場面として,2つの場面が考えられている.一つは,無関連な刺激に対する反応を抑制する機能.もう一つは,一度解発した反応を抑制する機能である.これまでの研究(土田,1991;土田,1997a,土田,1997b)で無関連な刺激に対する反応の抑制の問題を検討してきた.その結果,高齢者群では,特にストループ課題に代表されるような反応のターゲットとなる刺激とディストラクタとなる刺激が同時に提示されるような条件では,ディストラクタに対する誤反応が増加すること.しかし,ターゲットとディストラクタが別々に提示されるような条件では,反応の抑制が充分機能し,加齢の影響を受けにくいことなどが明らかになってきた.そこで,今回はもうひとつの抑制機能である,一度解発した反応を抑制する条件に注目して検討した.具体的には,「復帰抑制」の現象を中心に検討した.復帰抑制とは,一度解発した反応への抑制が影響する現象である.実験の結果,高齢者群でも復帰抑制の現象が確認できた.このことは,高齢者群でも,一度解発した反応を抑制する機能が働いていることを示している.さらに,高齢者群では,大学生群よりも強い復帰抑制の現象がみられたた.なぜ,高齢者群で.かえって強い復帰抑制が観察されたのかは今後の検討を待たねばならない.さらに,実験を追加し,2つの抑制の機能はその対象が変わるだけで,単一の機能とみなすべきか,それともある程度独立した機能とみなすべきかを実験的に検討した.その結果,2つの抑制機能はある程度独立した機能と思われる実験結果が得られた.
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