1998 Fiscal Year Annual Research Report
河川環境の保全を軸とした流域ネットワークの発展過程に関する調査研究
Project/Area Number |
10710065
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野波 寛 関西学院大学, 社会学部, 専任講師 (50273206)
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Keywords | 環境問題 / 河川環境 / ボランティア / ネットワーク / 流域 |
Research Abstract |
同一河川の上流部(山間部)から下流部(都市部)の複数の自治体に居住する住民が,河川環境の保全を共通目的とした交流から環境保護運動のボランティア・ネットワークを形成する過程について調査した.フィールドとしては,兵庫県丹南町を源流として三田市・宝塚市を流れ,西宮市・尼崎市を河口とする2級河川の武庫川を取り上げた.武庫川流域では,1970年代より有機栽培農産物の産直運動を媒体とした丹南町・三田市の生産者団体と西宮市・尼崎市の消費者団体の結びつきがあったこと,現在西宮市の武庫川中流域で進行中であるダム建設計画をめぐって流域全体の住民が参加する住民運動組織が結成されていること,など住民の流域ネットワークが実際に発展中であり,調査地点として選出した. 武庫川流域で,特に河川環境の保全を目的としたボランティアの住民団体を,源流域の丹南町から河口域の西宮市・尼崎市に至る地域より16団体選出し,それぞれの代表者にインタビュー調査を実施した.これらの団体の活動は,河原の清掃活動・河川改修に関する行政との交渉・近隣住民を交えた川遊びイベントの実施・有機農産物の産直など,多岐にわたっていた.従来,こうした活動は,その団体の中心メンバーが在住する地域の内部で実施されることが多かったが,現在は,先のダム建設計画をめぐって諸団体が相互に連絡を取り合い,1997年に上位団体として「武庫川を愛する会」という団体を組織化している. この上位団体を結成するに至った,それぞれの活動地域を越えた団体間の地域外ネットワークの発展過程,ならびに地域内における近隣住民との結びつきから成る地域内ネットワークの現状について,これらの団体のメンバーを対象とするアンケート調査を実施した.今後,この調査の結果を,団体に参加していない一般住民を対象とした調査の結果と比較検討する予定である.また,これらの調査と併行して,武庫川全体の生態調査を実施し,兵庫県内でレッドデータ記載種となっている水生動植物の生息地を発見した.
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