Research Abstract |
阪神・淡路大震災後に神戸市内の幼稚園で行った筆者らの調査では,幼児にも多くのストレス反応が出現することが示され,震災後の3年間に,震災により2次的に発生した母親との関係を中心とする家庭内での問題が,幼児にとってのストレッサーとなっていることが見い出された。しかしながら,幼児のストレス反応の要因や対処行動についてはレヴューも少なく,具体的な対応については十分に検討されていない。そこで,本研究では,幼稚園教育において実践可能な,幼児を対象とするストレス・マネジメントプログラムの検討を目的とした。 先行研究より,子ども版腹式呼吸法,子ども版漸進的筋弛緩法,イメージトレーニングから編成されるリラクゼーションを5歳児169名を対象として実施し,それぞれの実施前後に自覚された感情(活気,疲労,緊張-不安,落ち込み,敵意,平常)を測定した。また,通常保育内容より描画,体操,お遊戯を選択し,同様に実施前後の感情測定を行った。 その結果,腹式呼吸は,活気を減少させ,疲労などのネガティブな感情を増加させる傾向にあることが示された。また,イメージトレーニングには,緊張-不安もしくは落ち込みを減少させる効果が認められた。しかし,漸進的筋弛緩,および各保育内容については,実施担当者によって幼児の感情変化の違いが著しく,一貫した効果を認めることはできなかった。 以上の結果より,まず,実施担当者を同一に設定する,腹式呼吸法を一種の訓練ではなく,遊びの中に取り入れることが必要であると考えられる。今後は,協力幼稚園と相談の上,プログラムの変更と変更後の効果の検討を行う予定である。
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