1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710090
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 講師 (60301355)
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Keywords | 森林管理 / 山村 / コモンズ |
Research Abstract |
本研究の目的は、人間による働きかけがなくなるという意味において、社会的に空白地帯となりつつある森林について、地元住民と森林のかかわり(生業)という視点から考えることである。今年度は、和歌山県の龍神村、宮崎、熊本の山村をまわり、フィールドワークを行ってきた。そして、そこで地元の人々の生業構造と森林保全のかかわりを調べていくなかで、「資源」という言葉や特定の機能に関連づけるだけではとらえられないような森林との関わりがあることに気づき、それが森林保全を考えるうえで重要な問題だと考えるようになった。 すなわち、森林は、公益的機能や経済的評価などさまざまな側面から論じられているが、それと同時に、このような経済評価ではすくい取ることのできない、なにか特別な存在感をもった空間としてもとらえられており、それは、近代所有法の網がかぶせられる以前からの利用慣行や所有感とも深く結びついているのである。 本年度は、とくに龍神村の住民たちに焦点をあて、彼らが森林をどのような空間として経験しているかという問題を、森林の所有構造に結びつけて検討した。それを本の1章としてまとめたものが、「森の景観」(『講座人間と環境第4巻 景観の創造』昭和堂、所収)として1999年の春に出版される予定である。 来年度は、さらに森林管理のしくみや具体的なあり方について調査をすすめ、その結果を、生業や所有のあり方という視点から整理していく予定である。それと同時に、本年度の視点をさらにすすめて、山村で生活するということ自体の意味とも絡めた次元で、森林とのかかわりについて考えていきたい。それを考えることによって、日本独自のエコロジー論まで考察の範囲を広げていきたいと考えている。
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