1998 Fiscal Year Annual Research Report
フランス革命期の総裁政府下における「公教育」の実施・再編過程に関する実証的研究
Project/Area Number |
10710113
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
後藤 亜子 (小林 亜子) 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (90225491)
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Keywords | フランス革命 / 総裁政府 / 内務省 / 公教育 / 公共性 / 公論 / フランソワ・ド・ヌフシャトー / デステコット・ド・トラシ |
Research Abstract |
本研究は、フランス革命後期、総裁政府期(1795〜1799年)の公教育の実施状況の解明を目的とする。総裁政府期の公教育の実施・再編過程の重要性は、「1995年公教育組織法」という体系的公教育法の成立をうけて、革命初期から論議されていた様々な「公教育」論が、初めて現実の社会に本格的に適用、実施された点に存在する。しかし、総裁政府期の公教育史研究は、刊行史料の不在のために、著しくたち遅れていた。そこで本研究では総裁政府期の内務省関係の未刊行史料の調査をすすめ、内務大臣フランソワ・ド・ヌフシャトーの行った「公教育実態調査」関係史料および、公教育についての報告の含まれた内務省『県派遣委員報告』関係史料を発見した。これらは、当時の公教育の実態を知ることのできる貴重な史料群である。 本年は、研究年度御度の初年度にあたるため、研究の大半は、史料の収集、読解、および関係文献の渉猟、検討にあてられた。具体的には、先述の内務省関係史料の一部を、フランス国立古文書館からとりよせるとともに、総裁政府期の公教育の諸政策の思想的背景を明らかにするため、総裁政府期の文献・史料を所蔵している東京大学、京都大学、広島大学、北海道大学などで史料の収集につとめた。その際とくに、総裁政府期の公教育を強力に推進した内務大臣フランソワ・ド・ヌフシャトーと、公教育委員会委員で当時の公教育の現状についての報告をまとめたデステュット・ド・トラシに注目し、ヌフシャトーの発した通達および彼自身の著作と、トラシがまとめた当時の公教育の現状についての報告および彼の公教育に関する著作を収集。これらの史料については、読解、分析もすすめており、研究成果の一部は平成10年10月の社会思想史学会で「フランス革命と公共性-公論・公共精神・公教育の系譜学試論-」として報告を行った。報告は『フランス革命と公共性』と題する論文集として平成11年度中に刊行予定である。
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