1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本における試補制度導入の可能性について-教師教育の連続性の観点から-
Project/Area Number |
10710119
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
榊原 禎宏 山梨大学, 教育人間科学部, 助教授 (90215616)
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Keywords | 教師教育 / ドイツ連邦共和国 / 試補制度 |
Research Abstract |
本年度は、現在のドイツにおける教師教育研究、とりわけ大学における教員養成と試補教員(Referendar)に関わる近年の文献の収集・整理を進めた。また、日本における試補制度導入の可能性を考察するうえで、ドイツでの経験を学ぶべく、バーデン・ヴュルテンブルク州の州立教育研究所(Stuttgart)を訪問して、同州の学校改善プロジェクトの担当者でもあるDr.G.Schnaitmann氏のほか、同研究所スタッフから研究レビューを受けた。あわせて同地で、ギムナジウム、職業学校、あるいはゼミナール(Studienseminar)で教師教育を受ける試補教員やその指導教員を紹介され、このテーマについて彼らと意見交換を行った。 これらの結果、以下のことが仮説的に明らかになったと思われる。(1)大学段階での教員養成とゼミナールでの試補教育は、前者がより理論的、後者がより実践的と制度上の位置づけそのものが異なっている。(2)試補教員の多くは、大学段階の教員養成に批判的で、それが実際の授業に役立たない点を指摘する。しかし一部ではあるが、「役立ち方」の解釈を巡っては異なる理解も見られる。(3)大学とゼミナールの繋がりは、事例の限り、個人的な関係で認められるのみであり、組織的に教師教育の連続性を確保するものとはなっていない。(4)ゼミナールでは、現職教員のみならず教授が指導を担当し、試補段階における質的な条件整備がなされている。 以上の暫定的知見をもとに、次年度は日本での新任教員の職業経験を把握、分析し、もって日本において試補制度を導入することの可能性、そしてその場合の諸課題について考察を進めたい。
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