1998 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄のシャーマニズムとエスニック・アイデンティティの形成に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
10710151
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
蛭川 亮子 日本女子大学, 人間社会学部, 助手 (90297979)
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Keywords | シャーマニズム / エスニック・アイデンティティ / 沖縄 / 宗教変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代社会における沖縄シャーマニズムの変容を、シャーマン(ユタ)の語るエスニック・アイデンティティの分析を通じて明らかにすることにある。そのため、今年度はこれまで収集してきたユタの語りに、今回新たに調査収集したデータを加え、そこにみられる語りの変化を抽出した。その結果、一部のユタにみられた新しい語りの特徴として、以下の諸点が挙げられた。 1 「科学的」用語の多用 2 「ニューエイジ」的な用語の使用 3 対大和・対世界・対宇宙の中での沖縄(人)の位置づけへの言及 1に関しては、ユタは染色体やDNAなど生物学、元素など化学、電磁波・波動など物理学という科学的分野で使用されている用語を駆使して宗教的世界観を語っている。これは、ユタが自分の宗教的世界観の正当化・権威付けのために「科学的」用語を用いていると考えられる。また、2に関しては、ユタが語る言葉には、神と交流し判示(託宣)をすることを「スピリチュアリズム」や「接触現象」と言ったり、災いの原因を「超常現象」、夢は「体外遊離」と説明するなど、いわゆるニューエイジ運動で語られる用語がみられる。3に関しては、ユタによる「沖縄(人)」の日本の中、あるいは世界や宇宙の中での位置づけが語られる。具体的には、「沖縄は世界の根」、「沖縄の聖地、久高島はビカイアという古代魚の形」など、ユタは沖縄や沖縄の人々の古さ・正統性を主張する。このような動きは、現在進行中のグローバリゼーションにより、ユタの持つ世界観がシマという村落内から対大和をはじめ、対世界、あるいは対宇宙まで拡張していることからくるといえる。
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