1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710168
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
古尾谷 知浩 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部 史料調査室, 文部技官 (70280609)
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Keywords | 漆紙文書 / 都城 |
Research Abstract |
1、 本年度実施した作業 平城宮・京出土漆紙文書のうち、奈良国立文化財研究所発掘分のほぼ全てについて調査を行った。現物を観察し、形態上のデータ(法量、漆付着状況など)、文書としてのデータ(界線、界幅、行間、字の大きさ、紙継ぎ目など)を得た上で、これを資料カードに記入した。また、赤外線テレビカメラの画像データをパソコンに取り込んで、ネガフィルムに焼き付けた。この紙焼きを資料カードに貼付し、平城宮・京出土漆紙文書全てについて一覧できるようにした。この資料カードは奈良国立文化財研究所に保管してある。 2、 個々の調査における主な知見 (1)平城京左京八条一坊六坪出土の漆入り曲物容器にかぶせられた資料について、釈文の訂正ができたほか、従来気づかれていなかった曲物側板への墨書を発見した。(2)平城京左京二条二坊の二条大路上に掘られた濠状遺構の資料について、従来墨痕を認めていなかった断片に界線を発見し、文字のある部分は残らなかったものの、本来比較的整った帳簿の一部であったことを確認した。 3、 成果と課題 (1)の曲物側板の墨書は、当該資料については不分明な所が多いが、漆の生産、貢納などに関わる墨書である可能性があり、これらの解明に寄与するほか、漆の蓋紙が漆容器とともに地方から都城に運ばれてくる可能性も含め、漆紙の伝来を考える際の素材となりうる。今後類例の調査が課題となる。(2)については、赤外線による観察で一見文字がないように見えても、水で濡らすことにより墨痕が浮かび上がる好例であり、今後各地出土資料を観察する上で注意を喚起する資料となった。
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Research Products
(1 results)