1998 Fiscal Year Annual Research Report
宋〜清間の比較の視点から見た中国官僚犯罪についての法制史的研究
Project/Area Number |
10710170
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
青木 敦 岡山大学, 文学部, 講師 (90272492)
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Keywords | 中国 / 江西 / アジア / 法制 / 制裁 / 訴訟 / 官僚制 / 監察 |
Research Abstract |
法運用の中国的特色への関心から、宋〜清代の官僚犯罪にかかわる研究を以下のように遂行し、成果を得た。まず、宋代の官僚処分について『宋会要』職官「〓降官」を、弾劾された者・弾劾者・弾劾理由・処分内容に則して分析した結果、これまで考えられてきたように「地方官-監司による監察」「中央官-御史諌官による監察」という図式が誤りであることが明らかになった。現実には地方官もかなりの部分が御史諌官により弾劾されており、しかもそれは首都杭州からの距離にほぼ比例していることも明らかになった。次に首都の御史等が如何に地方官を弾劾し得るか、南宋時期の関連記事を中心に検討した結果、地方の民衆が直接に首都に赴く例も少なくなく、こうした情報源を「風聞」として得ていた可能性が高くなった。地方官告訴・告発に関連する上訴制度について「北宋末〜南宋の法令に付された越訴規定について」(仮題)を執筆した。 しかし、活発に訴訟を起こす社会そのものについては、別途の研究視角が必要となった。地域社会論からすれば法律制度について中国的と言うことはできるが、無限の多様性を持った地域諸社会を中国という枠で括ることにはそれほど意味がなく、特定のつながりを持った地域社会を設定せねばならない。そこで『文献通考』『元史』等所載戸口データをもとに、訴訟行動の多さと人口増加率の相関を明らかにした「健訟の地域的イメージ-11 13世紀江西社会の法文化と人口移動をめぐって」を執筆、『社会経済史学』に掲載予定である。
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