1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710175
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
桑野 栄治 久留米大学, 文学部, 助教授 (80243864)
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Keywords | 李朝初期 / 国家祭祀 / 国朝五礼儀 / 経国大典 / 地方行政 / 学校教育 / 文廟 / 社稷壇 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成10年度は官撰史料の調査・収集に力点を置いたが、その過程で、韓国における最近の国家祭紀研究の動向と問題点(『朝鮮学報』169輯)、王都漢城で行われた祭祁儀礼と地方社会との関係(『月刊韓国文化』231号)をひとまず整理した。これらの作業により得られた成果の概要は、以下の通りである。1 『李朝実録』とr朝鮮王朝実録CD-ROM』により各邑(郡県の総称)の文廟祭関連記事を中心に収集した結果、15世紀初頭には制度的枠組みがほぼ整ったこと、祭祁管理者は政府から各邑に派遣された長官(守令)であるが、その怠業が政府に報告され、改善策として観察使の監督権を強化さ庭たことが明らかとなった。2法典および礼典上の祭礼制運用規定を検討した。その結果、(1)基本法典の『経国大典』では、国家祭紀に関する条文は祭紀時日と予行演習に限定される。一方、(2)『国朝五礼儀』では守令を主宰者と明記するなど、地方社会の祭祁に関する運用規定は基本礼典のr国朝五礼儀』に譲っている。さらに、(3)その『国朝五礼儀』の現存本としては名古屋市蓬左文庫本(1552年内賜本)が優れている、の3点を新たな知見として得た。3人文地理書であるr新増東国輿地勝覧』の祭祁施設関連条文に注目した。李朝初期以来、各邑には文廟・社稜壇・城陸祠・属壇が共通して設置されており、慶尚道東莱県(現在の釜山市)を事例に李朝後期の『輿地図書』『海東地図』と比較対照した結果、郷校(国立の学校施設)における祭礼機能強化の側面が明らかとなった。今後の研究の展開に関しては、当初の研究計画通り、次年度の前半期に『古文書』『古文書集成』のほか儒家文集を中心に祭礼関連記事を収集し、在地社会の儒家による祭礼観を分析する。そして、今年度に調査・収集した官撰史料との整合性、また郷校の教育機能との関係に留意しつつ、次年度の後半期を論文執筆期間とする。
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Research Products
(2 results)