1998 Fiscal Year Annual Research Report
古典期アテナイにおける、ポリス共同体とフィリア(友愛)
Project/Area Number |
10710185
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
北村 麻子 奈良大学, 文学部, 講師 (00289125)
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Keywords | フィリア / 友愛 / アテナイ / アンドキデス / ヘルソス / アセベイア / 家 |
Research Abstract |
本研究の目的は,古典期アラナイにおける公的世界の成立を,ポリス成立以来から存続する私的人間関係との関係柱において再検討することにある.なかでも本年度は,従来続けてきた家と共同体との関係についての論稿のほかに,若者集団であるヘアイレイアについても,手がかりとなる論稿をまとめつつある. アテナイにおいて私的人間関係の核(これをFochallは、Limit of Trustと呼んでいる)となっていたのは,核家族をさほど超えない範囲の人々であったといわれている.いっぽうでこのLimit of Trustの成立する範囲を超えて親しさの関係が拡がる場合には,より自覚的に,成員の行動規範において公的世界が意識されていたことが予想される. 家の場合についてみれば,核家族を超えた家族関係は,時に法的弁論の対象となる.家の自律性が社会的に認知されるためには,氏家法廷という公的な世界において,それを説得する必要があったのである.家は社会的な存在であった.ヘタイレイアの仲間も共同体的な現範の判約のもとにあった.紀元前415年のいわゆるヘルメス柱像研壊事件にかんする当事者はのち行動分析が,私的綛帯と共同体的なものとのあいだで関係を示しだす. その成果を5月の西洋古典学会で発表することが決まっており,現在は関連する資料をコンピュータのデータベースに読み込み,認識,整理している最中である.3月9日より予定している英国出張においては,ギリシア社会史や造詣の深いR・オズボーン、R・パーカ両教授がレヴューをうけることが決まっており,ヘタイレイアに関係する資料や現在以来における同様の研究の進展状況についえ示唆を与えられることを期待している.近年のアテナイ史研究の動向は,私的人間関係の公的存在意義に着目する傾向にあり,本研究と問題関心を見直している.それゆえ欧米学界における近年の研究成果を関係史料の収集を,おこなってきたが,一方で自分の研究成果を欧米学界に環元するためには,邦訳で論文をしても無意味でありこの状況の打破を探索している.
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