1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710200
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
肥爪 周二 茨城大学, 人文学部・人文学科, 助教授 (70255032)
|
Keywords | 悉曇学 / 韻学 / 行智 / 文雄 |
Research Abstract |
(1)近世に飛躍的に発展した韻鏡研究の成果の利用・諸外国語(蘭語・ロシア語など)に関する知見の導入は、中世以前の悉曇学から近世悉曇学を質的に飛躍させるために必須のものであった。特に、近世悉曇学における唐音・韻鏡利用について、文雄『悉曇字記訓蒙』・行智『悉曇字記真釈』『悉曇字記真釈私録玄談』『梵漢対訳字類編』等の悉曇学書を中心とした調査を、前年度に継続して行った。 (2)国語学の立場からは研究されることのまずない、悉曇学の文法分野の諸著作について、慈雲尊者の著作を中心に収集・整理を行った。ただし、現在調査が及んだ範囲では、日本悉曇学における独自の成果というべきものは極めて乏しいということが言えそうである。 (3)近代以降の音韻研究に多大な影響を与えた伝統韻学の用語の、近世における実態を調査した。例えば、「半濁音」という用語は、パ行音以外にもナ・マ・ラ行など『韻鏡』の清濁音相当の行、大和言葉の語頭には立たないという意味で濁音に準じるラ行音、通常ハ行の清濁の問題としては扱われないハ行転呼音、サ゜セ゜ソ゜などの破擦音に用いられた例がある。かような多様な韻学用語な用法は、近世悉曇学においても様々な形で見られるものであり、マ行・バ行、ワ行・バ行をそれぞれ清濁の対のごとく扱った例、日本語には存在しない音を清濁の体系に組み込んだ例、韻鏡の匣母(有声のh相当)の文字をア行の濁音(ア゛行)とした例など、特殊な事例が多く指摘できる。
|