1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 敏朗 京都大学, 人文科学研究科, 助手 (80283670)
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Keywords | 方言 / 標準語 / 国民国家 / 帝国 / 共通語 / 小倉進平 |
Research Abstract |
当該研究課題名のもと、第一年度である今年度は、近代日本における「方言」研究史に関する様々な論文を収集し、分析を行なった。その一方で、「方言」研究の歴史的な流れを知るために、主に明治期の資料・史料の収集を行なった。その結果、明治以降現在に至るまで、「方言」の語られ方にはある一定のパターンが存在することがわかった。まず、基本的な考え方として、「方言」とはある「基準」からのみで語られてきたという構造を見いだすことができる。その「基準」には、時代時代を反映する用語が入れられる。「方言」研究は現在まで四度の「山」を迎えているといってよいのであるが、第一の山は、「基準」に「標準語」が入れられる十九世紀末から二十世紀初頭にかけての近代国民国家・日本の創出期である。第二の山は、「東亜共通語」を「基準」に入れることが可能な、十九三〇〜四〇年代の「帝国」として日本が再編成される時期である。第三の山は、敗戦後で、「帝国」としての領士がなくなり新たに「新生」国民国家・日本を創出していかねばならない時期で、「共通語」を「基準」としてそこから「方言」が語られるようになった。第四の山は、「多言語多文化主義」という「基準」から「方言」がとらえなおされてきている現在、つまり近代国民国家システムそのものが問いなおされてきている「国際化」の時代である。これらの「山」の特徴を見ていくと、近代国家のありようが問いなおされる時期に「方言」問題が生じていることが判明する。こうした構造を把握したうえで次年度の研究では、各時期ごとにより詳細な分析を行う予定である。また、この研究に附随して、朝鮮語の「方言」問題との比較が必要と考えたため、小倉進平という京城帝国大学にいた朝鮮語学者の言説を追い、近代国民国家における「言語」の構築と「方言」の研究のありようについて考察を行なった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 安田 敏朗: "「方言」認識の諸相" 現代思想. 26巻10号. 192-205 (1998)
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[Publications] 安田 敏朗: "日本語論のなかのアジア像" 立命館言語文化研究. 9巻5・6合併号. 63-76 (1998)
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[Publications] 安田 敏朗: "「言語」の構築-小倉進平と植民地朝鮮-" 三元社, 321 (1999)