1998 Fiscal Year Annual Research Report
河内本源氏物語の全校異集成とその成立過程についての基礎研究
Project/Area Number |
10710214
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
加藤 洋介 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (00214411)
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Keywords | 河内本源氏物語 / 一条兼良 / 今川了俊 |
Research Abstract |
本研究の目的は、河内本源氏物語に関する全校異の集成と、それによって河内本源氏物語の成立過程解明の目途を探ることにある。全校異の集成については、平成4年度科研費 奨励研究(A)「河内本源氏物語の校合と校異語彙索引の作成」、および平成6〜8年度科研費 一般研究(C)「河内本源氏物語の諸本調査と校異作成およびそのデータベース化についての研究」の成果に、新たに岩国吉川家本・鳳来寺本(東海大学蔵現写本による)・書陵部本の校異を加えることを目標にしている。 本年度はまず書陵部本についての調査を終了し、校異の収集および伝本の性質についての考察を行なった。詳しくは「了俊・兼良の源氏物語-書陵部本源氏物語をめぐって-」 (『愛知県立大学 説林』48号、一九九九年三月)にまとめたが、この本は『源氏物語大成』が「兼良本」として採用した二巻とかつて一具であったもので、奥書の記事からは当時の源氏物語本文に対する認識の程度を窺うことのできる大変興味深い一本であることが判明した。また鳳来寺本については、東海大学での調査を継続しており、本年度は予定通りの作業を行ない、来年度中には調査を終了できる目処をつけることができた。この調査により、『源氏物語大成』では知ることのできない細部にわたる校異を収集することができ、現在の河内本源氏物語諸本間の相互関係を解明することが可能になる。岩国吉川家本については撮影と写真化を終え、来年度には本文調査に入ることができる状況を整えた。 上記の作業と並行して、数種の別本の本文について調査をした。それによって、青表紙本の本文を底本とし、それを数種の別本によって校訂することから、河内本源氏物語が成立した巻があることが判明した。これについても来年度には活字化して発表する予定である。
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Research Products
(2 results)