1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710217
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大野 圭介 富山大学, 人文学部, 講師 (30293278)
|
Keywords | 山海経 / 文献学的研究 / 戦国 / 中国古代神話 / 郭璞 |
Research Abstract |
本研究は『山海経』諸版本を校合して電子データ化するとともに、並行して『山海経』各部分の成立の経緯について分析研究し、さらに後漢以後の『山海経』流伝の状況についても解明しようとするものであった。まず『山海経』の電子データ化は目下全文の本文及び郭璞注について入力を終え、また本補助金による諸書の購入や、所蔵機関へ出張しての閲覧によって、校勘作業も鋭意進行中である。この成果を利用し、科研費採択以前から行っていた「海内四経」の成立の研究に加えて、「大荒・海内経」の記述について分析を加えた結果、当該部分はいくつかの決まった書式に分類でき、重層的な由来を持ちながら、最終的に一つの世界観に基づいてまとめられたものであること、その世界観は『淮南子』 『呂氏春秋』と重なるものがありながら、これらほどには記述が整理されていないことから、主要な部分を戦国末期の成立と見るのが最も妥当であることを確認した。この成果は『富山大学人文学部紀要』第30号に発表している。また『山海経』の全篇を通じて、「爰有」の後に様々な産物を羅列する有韻の表現が、決まって理想郷や帝王の墓所を記す箇所に現れることに注目し、同様の表現が頻出する『穆天子伝』とも比較しながら分析を加えた結果、一定の産物を祝詞のように列挙し、無韻又は不完全な押韻である帝王の墓所の記事から、押韻の形がより整っていて美化が進んでいる理想郷の記事へという発展過程が大筋として認められることを確かめた。これは『山海経』の記事の新古の弁別はもとより、後の辞賦における鋪陳や押韻の技巧の源流を探る上でも重大な事実である。この成果については2000年3月刊行予定の『興膳宏教授退休記念論集』に投稿中である。以上の実績は神話・古史研究の資料として『山海経』を役立てるため、僅かながらも前進となり得たと信ずるものであり、本補助金の支給を受けたことに厚く感謝するものである。
|
Research Products
(1 results)