1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710217
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大野 圭介 富山大学, 人文学部, 助教授 (30293278)
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Keywords | 山海経 / 文献学的研究 / 戦国 / 中国古代神話 / 郭璞 / 明代 / 楊慎 / 王崇慶 |
Research Abstract |
本研究は『山海経』諸版本を校合して電子データ化するとともに、『山海経』各部分の成立の経緯について研究し、さらに後漢以後の『山海経』流伝の状況についても解明しようとするものであった。『山海経』の電子データはWWW上での公開を予定しているが、検索システムをWWW上で実現することは外字処理の関係で困難があるため、冊子体の郭璞注索引を別途作成する予定である。本年度は昨年度までに行った「海内四経」「大荒・海内経」の成立年代と、そのテキストの由来の重層性を解明する研究、及び『山海経』の全篇を通じて見られる、「爰有」の後に様々な産物を羅列する有韻の表現からその新古を弁別する研究に続き、郭璞以来千年の沈黙を破って再び注釈が書かれた明代における『山海経』の受容・研究のされ方に関する研究を行った。その結果明らかになったのは、朱子学派の王崇慶が「先王の道」の称揚に『山海経』を役立てることを目指して容赦ない本文批判を加え、楊慎は自然や生物などの該博な知識を生かして「実事」の立場からの『山海経』研究を行った。しかし普通の読者にとっての『山海経』は常識外の世界を漫遊する娯楽の書であり、読み手によって分裂した価値を持つ書であったということである。この成果は「日本中国学会第五十一回大会」において発表している。また「海外四経」についても研究を行い、異形の民の姿を描いた絵画的な記事と、帝王の伝説を描いた文章的な記事という異なる由来を持つ部分から成っていることを明らかにした。この成果は富山大学人文学部紀要に発表予定である。『山海経』は同じ部分においても新古の層があり、「平均的な」成立年代を一律に当てはめるのは危険であるということが明らかになったのは、神話・古史研究の資料として『山海経』を役立てることにとって進歩といえよう。本補助金の支給を受けたことに厚く感謝する。
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Research Products
(1 results)