1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710219
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稲葉 明子 早稲田大学, 演劇博物館, 助手 (50298197)
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Keywords | 語り物 / 説唱文学 / 木魚書 / 広東省 / 花箋記 |
Research Abstract |
「木魚書」とは中国広東省の語り物の版本である。清末から民国初年まで大変流行したが、現在では各地に散在する版本によってのみ往時を偲ぶのみである。それら版本の網羅的収集と分析を始めたところ、当時の文学・芸能の様子のみならず民俗学的にも貴重な資料となりうることがわかってきた。 本研究により、1995年に編んだ『木魚書目録』(好文出版)以来書面で交流を続けていたロシアの漢学者ボリス・リフチン氏とモスクワでお会いして、細かい点まで研究交流を行うことができた。 一方、今年の新たな展開として、アメリカ在住の梁培熾氏が種種の異本をつきあわせた『花箋記』会校会評本(曁南大学出版社)を出版、みることのできなかった版本についても基本的な情報が得られた。また、梁培熾氏は、リフチン氏が17世紀の版本と主張する『花箋記』オクスフォード本は唱詞に俗語が多く、他の古い『花箋記』に美本が多いことと矛盾すると学説が対立する形になっている。 第2年度はこのオクスフォード本を入手してこの問題に取り組むとともに、他の多くの版本について考察の幅を広げていぎたい。現存する木魚書は数としては道光以降のものが多く、一般にそれ以前のものは美本が多く後の作品ほど彫り方が粗雑で広東風の土着の言い回しが増えていく。ところが、そこに既に現れる叙情的な韻文形式の挽歌に注目すると、後の版本群に現れる同様の挽歌の方が脚韻がむしろ厳格であるという奇妙な現象がある。 『木魚書目録』既存データの変換と公開は、もとのデータに不要な「″」や「,」が多数混在するため新たな体系に整えるのに難儀している他、既にホームページ公開したBIG5ページもコードの変化で一般的なブラウザで見ることができなくなるなど、技術面でかなりの時間を要している。第2年度中にはデータとリフチン氏他最近の研究動向などをアップしたい。
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