1998 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀の北海道における西洋建築とパターンブックスに関する基礎的研究
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10710222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢口 祐人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00271700)
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Keywords | 日米文化交流 / 19世紀 / 北海道 / パターンブックス / 西洋建築 |
Research Abstract |
今年度は北海道大学付属図書館北方資料室でパターンブックスを閲覧し、農学校文庫に保管されている関連書のリストを作成した。また、パターンブンクスに掲載されている図版を調査し、データ収集のために写真撮影を開始した。同時に、それらの図版との比較される対象となる、北海道内の酉洋建築のデザインを観察し、資料収集を開始した。 農学校文庫には様々なパターンブックスや建築手引書がある。今年度は、とりわけ、Andrew Jackson DowningによるA Treatise on the Theory and Practice of Landscape Gardening andRural ArchitectureとCalvert VauxのVillas and Cottagesに注目した。Downingの著書はウィリアム・ホイーラーが初期の札幌農学校の授業で使用されていたことが判明した。またVauxの著書も、農学校創設期に図書用として購入されている。これらのパターンブックスは19世紀のアメリカで高い評価を受けたもので、アメリカの民間建築に大きな影響を与えた。ウィリアム・ホイーラーなどの札幌農学校のアメリカ人教師が、これらの書を北海道でも参照し、その効用を紹介したと考えられる。 調査の過程で、VauxのVillas and Cottageに掲載してあるデザインが、農学校の演武場(現在の時計台)のデザインに影響を与えたのではないかと推測された。現在、両者の比較対照を慎重に行っている。 次年度は、パターンブックスの図版と西洋建築の比較データの作成を続け、具体的な両者の関係を調査することで、建築を通した19世紀の異文化交流に関する知見を深めたい。
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