1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710226
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
田中 智之 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (20241739)
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Keywords | 他動虚辞構文 / 節構造 / EPP素性 |
Research Abstract |
OED,Paston Letters等の調査結果とBreivik(1983),Visser(1963)等の先行研究から総合的に判断すると、英語史において他動虚辞構文は14世紀に出現し、16世紀中にはほぼ消失したと推測される。このように英語史において約2世紀の間存在していた他動虚辞構文は、(i)虚辞のthereは[Spec,CP]でなく、IP内部にある、(ii)不定主語はVP内主語位置ではなく、VPの外に移動している、という2点に関して、現代ゲルマン語に見られる他動虚辞構文と統語構造上平行的であったと考えるべき経験的証拠がある。すなわち、他動虚辞構文が許されるためには、VPの外部に2つの主語位置が必要なのである。したがって、古英語から14世紀までは2つの主語位置が利用不可能であったが、14世紀に利用可能になったので他動虚辞構文が許されるようになり、16世紀中に再び利用不可能になったため他動虚辞構文が消失したということになるが、このことは受動虚辞構文の歴史的発達に関する調査からも支持される。次に、このように(奇妙な?)主語位置の利用可能性に関する歴史的発達があったのかを明らかにするために、他動虚辞構文や受動虚辞構文以外の文一般における主語の分布について考察する必要がある。その際、話題要素によって導かれる主節における名詞主語と代名詞主語の分布に関する歴史的変化が鍵になるのではないかと考えられる。したがって、その変化からどのような機能範疇の素性、特にEPP素性の変化があったのかを導き出し、節構造の変化と関連付けて他動虚辞構文の歴史的発達を説明する、というのが今後の課題である。日本英文学会中部支部第50回大会シンポジウム(1998年10月25日、於名古屋大学)において1つの試案を発表したが、その妥当性についてより深く追求したいと考えている。
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Research Products
(1 results)