1998 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ記号論をベースにした、記号体系におけるコノテーションの機能と作用の研究
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10710243
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西川 香織 名古屋大学, 言語文化部, 助教授 (20242795)
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Keywords | コノテーション / デノテーション / メッセージ / 記号体系 / 広告 |
Research Abstract |
本年度は,まずドイツで展開された記号論を検証して記号論の基礎研究を確認するために,Kochが中心となって編纂された資料を入手し,その中でコノテーションに関する記述が行われている文献の整理を行った。その際のポイントは,これまでの意味論におけるコノテーションの記述をさらに発展させた研究がないかどうかということであるが,この先行研究の検証は来年度コノテーションについての性格記述をまとめる上で必要な第一段階である。Kochの資料以外にも随時文献を調査しているが,これまでのところ,コノテーションに関する新しい記述は見つかっていない。つまり,いずれの場合もコノテーションとは「『語』のもつ二次的な意味」として捉えられているだけである場合が多い。これまで整理した文献の量はまだ十分ではないので,引き続き文献の整理および検証を行う必要があるが,やはりコノテーションについての研究で歩を進めるためには,分析の対象を「ことば」以外のものに向ける必要性があると改めて認識した。「ことば」以外のもの,たとえば資料に見られるように,服や絵画や映画などにも「ことばらしき」性格が十分認められ,そこでは何らかのメッセージが発信されている。すでに本研究で分析対象として考え,実際に分析するために収集している「広告」にも多種多様なメッセージがあり,そのメッセージを作り出す種々の記号の一つ一つに,またはその全体に,コノテーションの存在が認められる可能性は十分あると思われる。今年度は雑誌やテレビコマーシャルなどの編集を中心とした広告資料の収集を行ったが,来年度はさらに年鑑などの資料も利用し,なるべく偏りのない全般的な資料収集を行う必要がある。来年度前期には資料の検証および分析対象の選択を終え,後期にはそれらの考察結果をもとに,コノテーションの機能と作用について一見解をまとめる予定である。
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