1998 Fiscal Year Annual Research Report
初期啓蒙主義時代におけるドイツ詩学史の再記述-模倣説の体系構造と人文主義諸学との相関-
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10710244
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 覚 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (40252407)
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Keywords | ドイツ詩学史 / 啓蒙主義 / 模倣説 / ゴットシェート |
Research Abstract |
原資料整備の方法論については、収集の前段階である選定作業の重要性を再認識した。種々の制約をもつ短期間の資料収集を補う意味でも、諸学の相関を示す書誌情報の充実は不可欠である。書誌情報を網羅的にリストアップする作業は現在も継続中で、次年度もさらなる質的向上を図る。収集した原資料については、主要学術用語の体系的位置について補助資料を作成するが、本年度は、章立て等の体系性に関する情報についてデータベースの概要を作成すると同時に、取り扱い対象となる概念の性格付けを行って、詩学や諸学の構造的視点から設定項目を捉え直す準備を行った。また、本研究課題の基本姿勢は、概念史的な研究手法から学の体系および諸学の連関を視野に収めた研究手法へと転換することであり、そうした観点からの基礎的な理論考察にもカを入れた。当時の詩学に強い影響を与えている哲学的可能世界論や修辞学的情念論との連関を評価するには、詩学の体系構造と悟性概念との関係性についての考察を経由する必要があるとの結論に到り、論理学的に捉え返された悟性の諸能力についての議論が詩学の構造を背後で規定している具体例としてゴットシェートの「批判的詩論」について論じた(希±24号の論文)。詩学の理論的な側面については、弁神論といった超越論的な図式との調和や、社会契約論等にも見られる自然性と人為性の比較論といった理論的契機が、誤謬を克服しながら類似や連関を発見していく人間悟性の諸能力と関係づけられる構造が重要である、という面を考察した。また、作詩法上の技術論といった実践的な側面については、とりわけ情念論の系譜について考察した。誤謬の源泉として情念や想像力を制御しようとする哲学的情念論とは異なり、情念を利用することで同化と異化の作用を創出しつつ悟性の視野の地平を拡大しようとする情念論が政治学・修辞学・詩学などに幅広く存在することが明らかになった(未発表)。
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Research Products
(1 results)