1999 Fiscal Year Annual Research Report
初期啓蒙主義時代におけるドイツ詩学史の再記述-模倣説の体系構造と人文主義諸学との相関-
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10710244
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 覚 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (40252407)
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Keywords | ドイツ詩学史 / 啓蒙主義 / 模倣説 / 人文科学 |
Research Abstract |
収集した資料の検討を通じて確認された詩学と修辞学の相関は概ね次のように総括される。(1)生産過程の区分を成す概念や作用性に関する概念の体系形成レベルでの導入。(2)言語操作に不可欠な論理性と受容者の情動を操作する非論理的側面の併存。(3)術としての長年の伝統と古典の存在。煩雑な規則が形成およびその綿密な分類。また、詩学と哲学との相関は次のような面に認められた。(1)歴史記述と異なる詩の内容の普遍性。可能世界論を援用したその説明。歴史と詩と哲学という伝統的な知の枠組みによる詩学の固有領域の規定。(2)情動作用に付与された啓蒙という目的。受容者の知の地平を拡大する論理階梯の上昇。概念・判断・推論といった論理学的な知の歩みと親和的なモデル。これらの諸点から、研究の主たる結論としては、次のような知見が得られた。(1)当時の詩学は、技術的なレベルでは修辞学と、詩作自体の反省的理解というレベルでは哲学と、相対的により多く接点を有する。「模倣」という概念はそれらを総合した概念である。(2)詩作品は物事の隠された連鎖に対する創造をかき立て、そのことが事実連関から真理の必然的な連関へという受容者の認識の歩みを支える。(3)人間形成の過程にまで踏み込んだ人文科学のパラダイムとしての雄弁術の知的伝統が、啓蒙の理念と溶け合う形で詩学の中で新たな哲学的な衣装とともに再編成されている。このことから我々が新たに構想すべき詩学史のモデルは、次の諸点に考慮すべきであると考えられる。(1)詩学の目的設定は、人文主義諸学における詩学の位置づけと連動している。(2)事実の連関と可能的・必然的な理念の連関との間に位置を占める「自然模倣」は単純に「他律的」と形容されるものではない。(3)論理と情動とを切り離し、美の無関心性・美学の自律性を前提とするような精神史モデルではなく、論理的な側面と情動的な側面の接合面を捉え、その意味を問うような精神史が求められる。
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