1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710248
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金沢 誠 千葉大学, 文学部, 助教授 (20261886)
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Keywords | 意味論 / 動的意味論 / 量化 / 照応 / 代名詞 |
Research Abstract |
英語におけるE-typeの複数形代名詞の意味論について,次のことを明らかにした. 1.いわゆるろば文において,単数形代名詞は次の点で複数形代名詞とは明らかに異なるふるまいを示す. (1)集合的(collective)な解釈,cumulativeな解釈など,複数形名詞句が通常持ちうる解釈が単数形代名詞にはない. (2)存在量化的な解釈と全称量化的な解釈のどちらが優先されるかが複数形代名詞と単数形代名詞の場合と異なる. 2.E-typeの複数形代名詞は先行詞の量化表現の種類によって二通りの解釈のされ方がある.先行詞がtwo donkeysのような裸の数量詞を持つ名詞句の場合は,単数形代名詞の場合のように,可能ないくつかの値(この場合は2匹のろばからなるグループ)のうちのひとつを値とするが,先行詞がat least two donkeysのような場合は先行詞を含む節が表す条件を満たすすべての対象からなるグループを値とする.前者の場合,ろば文の中では,単数代名詞の場合と同じような解釈のゆれが生じるが,存在量化的な解釈と全称量化的な解釈のどちらが優先されるかは,単数代名詞の場合と同様,文全体の主語を導く限定子の性質によって決まるところが大きい. 上のような性質は,動的意味論の枠組を使ってうまく説明できると考えられ,このことは大筋において示すことができたが,2の性質の厳密な取り扱いはこれからの課題である.
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