1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710254
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
若林 茂則 群馬県立女子大学, 文学部, 講師 (80291962)
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Keywords | 言語習得 / 格 / 極小理論 / 第二言語習得 / 素性 / 機能範疇 |
Research Abstract |
本研究の目的は、極小理論(Chomsky、1995)の枠組みで言語習得のしくみを明らかにすることにある。より具体的には、申請者が、英語の機能範疇Tに伴う形式素性のうち一致素性、V素性、時制素性の習得のデータに基づいて発表した論文(Wakabayashi、1997)における言語習得のモデルを、格素性の習得という観点から検証することにある。 平成10年度は先行研究検討とデータ収集を中心に研究を進めてきた。文法理論においては、現在のミニマリスト・プログラムにおいては、格素性は移動を起こす素性とは別のものだが、移動(あるいは併合)によって照合されると考えられており、日英語いずれにおいても、主格、目的格、所有格はそれぞれT、v、Dで照合されると考えるのが最も説得力があるという結論に至った。言語習得においては、英語の代名詞格の母語習得に関する論文はいくつかあるが、その第二言語習得についての研究はほとんどないことが分かった。実験データとしては、日本人英語学習者(中学生、高校生、大学生)の計約50人の発話データを収集した。詳細な分析はまだであるが、現時点での発見として、日本人英語学習者の代名詞格の誤りがごく初期にしか見られないことと、英語を母語として習得している子どもの誤りには見られない誤り(主格の過剰一般化)が少数観察されたことが挙げられる。また、本研究の中間報告として、インプットと文法構築との関連に関する論文をSLRF98で口頭発表し、高い評価を得た。 今後の計画としては、文法理論研究を進める一方で、データ収集を更に充実させ、文法性判断テストによるデータ収集を実行し分析する。特に分析においては、代名詞格と他の素性との関係はどうなっているか、構文によって格の習得に違いがあるか、主格・目的格・所有格など格の種類によって違いがあるか、などを見ていき、グローバルな言語習得モデルの構築を図りたい。
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