1998 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本語形式名詞「の」に相当する方言表現の理論言語学的位置付け
Project/Area Number |
10710255
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
江口 正 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (20264707)
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Keywords | 形式名詞「ノ」 / 方言文法 / 理論言語学 / ガノ交替 / 焦点の分布 / パラメーター |
Research Abstract |
本年度は,前半で形式名詞「ノ」の研究のための理論的基礎づくりと来年度における中部方言の調査のための予備調査を行い、後半で九州方言の「ノ」の分布と「ガノ交替」との関係を調査し、データをまとめた。 年度前半では、国語学・日本語学・理論言語学においてどのように形式名詞「の」を位置付けているかについて文献調査を行い、データを集めた。集めたデータはコンピュータに入力し、後日の調査のときに利用しやすくした。長野市方言の予備調査では、形式名詞「の」の分布が、特に文末用法において特殊であるということを確認し、どこまでが文末用法になるかが問題であるということが明らかになった。 年度後半では、本研究の成果の一部を平成10年度国語学会秋季大会及び第22回関西言語学会で口頭発表し、以後の調査のための指針を得た。また、福岡市、大分市、島原市、山口市などで方言調査を行い、北部九州方言で形式名詞が体系的に「と」という形式になっていること、形式名詞が「と」という形式である地域に限って主文の「ガノ交替」が起こること、主文のガノ交替が焦点の有無と連動していること、『Xのもの』というときの表現が共通語でおこる「の」重複の回避がないこと、などを明らかにした。特にガノ交替が焦点の分布と関わっていることと、形式名詞「の」の機能とは連動している可能性があり、来年度以降での理論的整理に役立つと思われる。調査は、新聞記事や小説を謝金によってデータベース化したものを参考にして行い、調査結果のデータベース化やインフォーマント自身によるデータの訂正なども謝金によって行った。
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