1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710257
|
Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
副島 昭夫 麗澤大学, 外国語学部, 講師 (20236144)
|
Keywords | Sandhi現象 / 鼻音性 / 音韻規則 |
Research Abstract |
Sandhi現象のような現象は、音韻規則の心理的実在を示す現象として重要である。すなわち、Sandhi現象は、語境界によって発動する音韻規則であるから、統語部門からの出力に対して写像が行われることが明かであるからである。例えば、日本語の撥音音素は、「あんまり」のように語中にある場合、音声に必ず[m]が現われる以上、語彙的音韻指定そのものが/m/である可能性を否定できないのに対して、「本持った」のようなSandhi形式に現れる場合、「本取った」に現れる[n]と対立する形で「m」が現われることを定式化するためには、「本」の語彙表示において、撥音は不完全指定を受けると考えざるをえず、未指定素性は、音韻規則によって指定されると考えざるをえないのである(この点は、適正化理論のように、規則でなく制約で処理する場合でも基本的には変わらない)。従って、不完全指定を受ける撥音のような離散的音韻単位が必要であるということは心理的にも明かであると思われるが、このような抽象的レベルと現実の音声形式を結ぶ調音的、聴覚的規則、及び、中間派生レベルとしてどのようなレベル設定をすればよいかという点は、今なお十分には明かではない。 本研究は、これらの点を考察するための予備的研究であるが、今年度は、青森市方言、高知市方言、北九州市方言、福岡県久留米市方言、佐賀県小城郡方言について調査を行った。前鼻音化閉鎖音の場合には、撥音とは異なり、Sandhi現象として、先行する母音の著しい鼻音化が観察されるためである。この現象は、撥音などに見られる末梢のレベルの鼻母音化と見なされるべきではなく、実現ターゲットして指定される必要があると考えられる。なお、佐賀県小城郡は2型アクセントであるが、無アクセント化が進行していることが観察された。また、久保氏が報告される福岡市近郊の疑問詞疑問文イントネーションが、高平、低平双方の音調で実現することも判明した。
|