1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト言語の普遍文法原理の統語素性概念の吟味とその脳内メカニズム解明の為の基礎研究
Project/Area Number |
10710260
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
有川 康二 桃山学院大学, 文学部, 講師 (80299023)
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Keywords | 生成文法理論 / 統語論 / 素性 / 言語 / 実験 / テスト / 脳科学 / 生物学 |
Research Abstract |
1. 現在、『Handbook of Experimental Tests For Syntax』(「統語実験テスト小辞典」(仮称)A4で379頁分の英文草稿。)を準備し、追加、修正、削除等の作業を行っている。文献調査、及び学会(IIAS International Symposium on Neuroscience of Language(言語の脳科学に関する国際シンポジウム、於国際高等研究所(京都府)、平成10年11月12日〜11月14日)における情報交換の結果、新たに次のようなことが分かった。脳の高次視覚野の神経細胞群がどのような情報に反応しているのかについては依然として不明である。単に位置や傾き等の図形「特徴」(素性)に反応しているのではなく、単純化された最適刺激(特異刺激特徴)に反応しているとする立場や、異なった周波数と振幅のフーリエ表現素に反応しているとする立場等がある。従って、単純に生成文法における「統語素性」を脳科学における「素性」概念と同一視できない。脳の神経細胞が何ができて何ができないのかを見極めていくことが今後必要である。現段階では生成文法の理論的構築物を脳科学のそれと安易に対応させるのは危険である。 2. 日本語の機能範疇C^0の統語現象を観察し、従来の統語素性[+WH]に加えて、新たに[+DEC]の存在を予測し、これらの振る舞いが普遍文法原理に従うことを論文にまとめた。余分な剰余性を極限まで切り詰めるという研究態度(ミニマリズム)は数学や物理学等の分野では暗黙の前提であるが、これはヒト言語の分析にも有効なことが分かってきた。なかには理論的構築物は削除しても追加してはならないという単純、かつナイーブな態度に陥る者もあるが、C^0が関わる現象を全て[+WH]で説明することはできない。普遍文法原理に従う、C^0の[+WH]以外の最低限の素性を[+DEC]として提案した。
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Research Products
(1 results)