1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10710267
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 太郎 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (90239971)
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Keywords | アエネイス / ウェルギリウス / 西洋古典 / ローマ文学 / ホメロス / カルタゴ / 叙事詩 / ヨーロッパ古典 |
Research Abstract |
従来、『アエネイス』第一巻426行の表現は、その前後の描写(カルタゴの建造物の描写)といかなる関連を持つのか、問題とされてきた。私は第一巻全体の構成の特色と、作品全体の主題との関連に注目することによって、次の解釈を提案する。まず、第一巻全体は、次に示すリング構成を示すこと、その中で上記426行の表現はきわめて重要な意義を持つことが窺える。すなわち、a「ユノのたくらみ」(50-91)、b「トロイア人の今」(92-222)、c「過去の苦しみの経験」(198-207)、d「ウェヌスとユピテルの対話」(223-304)および「アエネアスとウェヌスの対話」(305-417)、e「カルタゴの町の描写」(418-29)、f「勤勉なカルタゴ人」(430-36比喩)、g「ユノの神殿の絵」(446-93)、f'「美しいディド」(498-502比喰)、e'「カルタゴの支配者ディドの姿」(503-8)、d'「イリオネウスとディドの対話」(520-78)および「アエネアスとディドの対話」(594-630)、c'「過去の苦しみの経験」(628-30)、b'「トロイア人の今」(631-56)、a'「ウェヌスのたくらみ」(657-756)といった第一巻を構成する各要素は、中央のエクプラシス表現(g)を包みながら均等に配置され、いわゆるリング構成を示す。g 「ユノの神殿の絵」は『アエネイス』における他のエクプラシス表現と同様、主人公の体験を読者の過去、現在、未来の出来事と関連づけようとする詩人の創作意図(ホメロスの作風の影響)を反映する。それは人間の普遍的営みを描こうとする意志を意味するものである。第一巻426行の表現に見られる「法」(iura)のモチーフは、このような詩人の創作意志と密接に関連するのみならず、上記リングコンポジションを成り立たせる上で不可欠の要素となっている。
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Research Products
(1 results)