1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代法思想の形成過程における環境観の変動の意義に関する研究
Project/Area Number |
10720003
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 徹 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (30222003)
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Keywords | 環境 / エコ・フェミニズム / F・ベーコン / 自然の支配 / 女性としての自然 / R・ボイル / 機械論哲学 |
Research Abstract |
平成10年度は、ルネッサンス期から近現代にかけての環境観をめぐるさまざまな資料を調査・収集するとともに、マーチャント、ミース、イリイチらを初めとするエコ・フェミニズムの基本的な文献を読解することによって、近代初期の〈環境への態度〉の変化が、人間観や世界観の根本的変動と連動して起こっていることを明らかにしようと努めた。 平成11年度はこの作業をさらに推し進めた。第一に、17世紀イギリスにおける自然哲学の進歩に多大な寄与を果たしたベーコンの原典および二次文献の分析を行い、このエポック・メイキングな人物が、いかにして環境観の変動を推進したかを追究した。その結果、すくなくとも、彼がルネッサンス以降盛んになった〈女性としての自然〉というイメージを巧みに利用しつつ、科学技術による〈自然の支配〉を唱道して、人類の物質的福利の向上をめざそうとしていたことが明らかにされた。 第二に、原子論的・機械論的自然哲学がまさに形成されつつあった17世紀中葉のイギリスにおいて、プロテスタンティズムという背景を共有するヴァーチュオーシ(科学的探求に深く係わった人々)によって、どのような自然論・環境論が展開されていたかを探求した。研究の結果、たとえばJ・グランヴィルは、ベーコンを忠実に踏襲して、自然科学の目的は自然を支配することによって人間生活を改善することだと考えていたこと、また王立協会の中心的メンバーだったボイルは、物質を〈生命なき〉諸粒子へと還元する一方、自然を人間にとって便利な生活品を供給する〈倉庫〉に格下げすることにより、環境へのはっきりした人間中心主義的・権力的態度を示していたことが、明らかになった。
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Research Products
(2 results)