1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10720010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩橋 健定 大阪大学, 法学部, 講師 (50293999)
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Keywords | 公共事業 / 外部効果 / 環境影響評価 / 行政訴訟 / 組織的意思決定 |
Research Abstract |
平成10年度においては、以下の研究を行い、次年度の研究の基礎を形成したが、課題も残存している。 1 我が国の重要判決の徹底的分析 重要判決(大阪国際空港訴訟・厚木基地訴訟・羽田空港訴訟・国道43号線訴訟など)の徹底的分析と、その他の判決の悉皆的調査によって現在の裁判所の判断を左右している要素について検討し、公共事業の環境への悪影響が争われた訴訟の多くにおいては、裁判所は被告側が現実にも法的にも多元的な組織であることを重視した判断をしていることを実証しようとした。しかし、確かに、裁判所の考慮要素の中には組織論的視点によって的確に理解できるものが多く含まれることは明らかになったものの、組織論的視点以外からの説明も可能であるため、別の手法による裏付調査の必要性が明らかになった。 2 伝統的ドイツ行政法学の構造とその日本への継受 我が国の行政訴訟制度の基礎を形成したオットー・マイヤー行政法理論と、現行法である行政事作訴訟法の立法過程についての資料収集と組織論的検討を行い、現在の行政訴訟制度は、その基本構造として政府が多元的な権力によって形成されていること、行政権だけに注目しても多元的な組織であって、その組織過程を通じて公益を代表しているということへの配慮を内包していることを実証しようとした。このことから、上記の組織論的視点の考慮が、行政訴訟の基本的構造に根ざすものであることは明らかにできたと思われるが、制度形成の沿革の中で意識されていたか否かについては確たる証拠を見いだすことはできなかった。
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