1998 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害予防システムと都市計画法における国家賠償責任の日仏比較
Project/Area Number |
10720014
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 立命館大学, 法学部, 助教授 (00268129)
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Keywords | 行政法 / 都市計画法 / 自然災害 / フランス |
Research Abstract |
フランスの都市計画法を利用した自然災害予防制度は歴史が古く、水害を対象としたPSSなどは戦前からの歴史を有しているし、現在では都市計画法典の全国都市計画規制(RNU)に含まれる諸制度は第二次大戦直後に制定されている。また、森林火災、雪崩、地震、地滑りなどの災害に対応する、都市計画法とリンクする自然災害による被害を防止するための制度が作られた。 これらとは異なり1982年法により成立したPERは、特定の災害を対象とするものではなく、一般的に自然災害による被害発生の防止を目指し、都市計画法とリンクした制度である。元々1982年法は自然災害被害者を救済する制度を構築するものであったが、被害者救済のみを対象とするのでは行政に対しても国民に対しても予防のインセンティブを与えることがないことが問題とされ、議会での議論により災害予防制度が付け加えられた。 当初、PERは、自然災害にさらされたコミューンなど地方自治体よって防災に役立つとして期待された。しかし、PERは策定手続やその効果といった点で多くの問題を抱え、その策定は遅々として進まなかった。その一方で被害者救済制度はかなり利用されることとなった。その結果、当初危惧されていたように、予防のインセンティブが働かず、自然災害予防制度としては「失敗」と評されることとなった。 1987年法により、自然災害予防システムは一定の改正を受け、更に1995年法によりPERは全面的に改正を受けPPRとなった。PPRは、これまで多数あった個別の制度を統一するだけではなく、PERの問題点を解決するため策定手続や暫定的な効力を定め、また1995年法は自然災害危険地域での土地収用制度を策定するなどより効果的な予防事業が行えることとなった。しかし、PPRにも問題点がないわけではなく、国が中心となって策定するPPRとコミューンが策定するPOSとの関係をどうするかについてなどまだ不明確な点が残る。
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