1998 Fiscal Year Annual Research Report
契約の拘勅の根拠に関する実証的研究-契約の性質決定についての日欧契約法の比較-
Project/Area Number |
10720017
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 清治 北海道大学, 法学部, 助教授 (20212772)
|
Keywords | 贈与契約 / 取消 / 撤回 / 契約の拘勅 / 要約契約 / 要式契約 / 意思主義 |
Research Abstract |
1 契約の拘束力の背景を実証的に探るべく、贈与契約に関する日本の裁判例を包括的かつ詳細に検討し、以下の新知見を得た。すなわち、 (1) 諸外国の民法典と比較し、簡易な方式しか要求していない現行日本民法典550条の淵源には、従来から指摘されていた「贈与=恩・義理」との日本的贈与観だけでなく、当該贈与の社会的有用性に着目されていた面もあること。 (2) 明治・大正期は、(贈与の撤回を阻む役割を果たすところの)「書面」・「履行」の意義につき、比較的限定的な解釈がなされていたが、その後は、多種多様な要因から口頭での贈与契約の撤回を否定する必要に迫られ、判例は「書面」・「履行」概念を拡張することでこの必要を満たし、そのため、右の両概念が返って空洞化したこと。 (3) 上記の多種多様な要因は、大きく分けて2つのカテゴリーに分類されること。即ち、 i 贈与の原因に関連するもの:たとえば当該贈与が家督相続人以外の子への贈与、報恩的贈与、社会的義務を果たすための贈与である場合、裁判例はその撤回を認めない傾向にあった。 ii 贈与を信頼した受贈者の保護:右の如き原因に基づかない、いわば純粋に好意的な贈与にあっても、受贈者が贈与を信頼し、負担を履行したり、先行投資をしたり、あるいは贈与を前提する状態が長期間継続した場合、信頼保護の観点から、贈与の撤回は認められない傾向にあった。 2 以上の知見は、従来全く指摘されてこなかったものであるため、池田清治・民法550条(贈与の取消)(『民法典の百年III』255-308頁所収1998年)として公表した。
|
Research Products
(1 results)