1998 Fiscal Year Annual Research Report
履行補助者論-契約規範の射程、複合契約論の視点からの考察
Project/Area Number |
10720025
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
亀岡 倫史 島根大学, 法文学部, 講師 (80284016)
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Keywords | 履行補助者 / 免責条項 / 第三者効 / 請求権競合 / 複合契約 |
Research Abstract |
(1) 平成10年度は、履行補助者自身の責任問題の一つである「履行補助者、とりわけ独立的履行補助者が下請契約中で自ら免責条項等を設けていたとき、これを主契約の債権者に対して主張して責任を免れることができるか(免責条項等の対外効)」につき、ドイツの裁判例、学説を中心に検討した。その結果、次のような諸点が明らかになった。 (1) ドイツの裁判例で対外効が問題となったのは、主として運送法、倉庫法の諸事例である。裁判例の結論を類型化して示すならば、補助者利用型、運送取扱人介在型、他人物混載型については、対外効を肯定し、荷受人所有者型、賃貸借リース介在型についてはこれを否定している。その際、契約の相対効(これは契約自由の原則を基底にしたもの)からの帰結からか、ある契約により不利益を及ぼされる契約外第三者の同意又はそれに準じるような行態を要求している。そして解釈論的基礎付けとしては、RG時代は、授権構成、ドイツ民法328条の基本思想を援用するもの、信義則に依拠するものなど様々であったが、BGHになって、ほぼ信義則上の悪意抗弁構成に依拠するようになってきている。 (3) ドイツの学説は、当初は対外効を否定する見解が支配的であったが、裁判例の動向に影響されて肯定説が増えてきている。そこでは授権、間接代理、悪意抗弁、先行行為に矛盾する挙動、ド民第991条2項などさまざまな法律構成が主張されているが、契約外第三者の事前の同意又はそれに準じる行態のほか、自己規律を念頭において行動する補助者の信頼をどの程度保護すべきかも重視されている。 (2) 現在、(1)の問題につき、平成11年度中に論文を公表すべく執筆をすすめているところである。また、平成11年度には、さらに履行補助者の自己責任についての残りの問題についても、成果の公表にむけて研究をすすめていきたいと考えている。
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