1998 Fiscal Year Annual Research Report
私的担保権実行に関する理論的考察 (適正性・合理性確保のための規範定立の試み)
Project/Area Number |
10720030
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
田高 寛貴 専修大学, 法学部, 助教授 (60286911)
|
Keywords | モーゲージ (Mortgage) / 譲渡担保 / 担当権実行 / 非典型担保 / フォークロージャー (Foreclosure) / 不動産担保 / 抵当権 |
Research Abstract |
現行法制度における欠缺部分ともなっている不動産担保権の私的実行について、その手続的適正を図るための法規範のあり方について示唆を得るべく、不動産担保の私的実行について明文をもって規定をしているアメリカ法を中心として考察をすすめてきた。アメリカ法の研究の視点は次の2点に集約される。 第一に、現行州法の網羅的検討である。アメリカは各州によって不動産法の内容が相当程度異なっており、担保取引のグローバル化に伴い、その不統一性あるいは前近代性について問題が多く指摘されているところでもある。そこで、多種多様な現行州法について、それぞれの制度がどのような利点をもち、どのような問題点をはらんでいるのかについて分析を行った。また第二には、こうした現行法の混乱状態を打開するべくすすめられてきた「統一土地担保法(Uniform Land Security Interest Act)」策定までの80年にわたる不動産担保法改革の動向を探ることから、現行州法の問題点をふまえたうえでのアメリカ不動産法の今後の方向性について検討を行った。 簡易な担保権実行手続とすることによって合理的な価額での換価を実現するという要請と、ときにそれとは相反する形で作用する、適正性確保のための厳格な手続規範の必要性とを、どのように均衡を図りつつ制度構築していくのかについてー必ずしもその取り組みは現行法上では成功しているとばかりはいえないもののー積極的に議論されているアメリカの法状況からは、こうした視点ではほとんど議論されていない我が国の担保権実行の状況を顧みても有益な示唆が多く得られたところである。次年度も、この点につき引き続き検討を進め、我が国における規範定立のための提言として成果を発表する予定である。
|