1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10720035
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
金 尚均 西南学院大学, 法学部, 助教授 (00274150)
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Keywords | 刑法 / 環境 |
Research Abstract |
環境保護を刑法の問題として考える前提として,「刑罰」とは何かを考えなければならない。このことは,刑事責任の場面だけでなく,とりわけ,刑事立法の場面でも重要となる。近年ドイツなど有力化している積極的一般予防論について,これは,確かに刑罰賦科の側面では,現行刑法規範の再確証とそれに伴う規範意識の強化・覚醒を意図するといえるが,環境犯罪などの立法の側面では,市民の規範強化はもちろん,その構築ないし創出が標榜されている。つまり,現代社会の問題を克服するために刑法を機能化・政策化させる理論的手法として積極的一般予防論を位置づけることができるように思われる。 環境犯罪立法では,保護することは,それによって,現代だけでなく未来をも展望した市民の環境倫理ないし道徳を確立することに主眼が置かれているように思われる。そのための刑法理論上の基礎となるのが積極的一般予防論という概念ではなかろうか。したがって,積極的一般予防論は,刑罰論としての意義だけでなく,これは,刑法の機能に関連しながら,立法論,つまり,何を犯罪とするか,何のために犯罪として規制するのかという問題にも影響を及ぼしている点にも重要な意義がある。しかし,そのことによって刑法による社会の市民生活または自由領域への過度の介入を招く恐れも否定できない。刑法を社会コントロールの手段として位置づけつつも,他のコントロール手段ではまかないきれないまたは処理することが適当でない事象のみを扱うという視点を決して忘れてはならないように思われる。
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