1998 Fiscal Year Annual Research Report
東ヨーロッパにおける民主化と「市民社会」-ハンガリーを中心に東中欧比較史の視座から-
Project/Area Number |
10720037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平田 武 東北大学, 法学部, 助教授 (90238361)
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Keywords | ハンガリー / 東ヨーロッパ / 東中欧 / 民主化 / 市民社会 |
Research Abstract |
1980年代末以降の東中欧諸国の民主化過程の分析を、ハンガリーを中心に「市民社会」概念を用いて長期的な歴史的展開の中に位置付ける作業を進める中で、幾つかの論点の重要性が明らかとなった。第一に、「市民社会」概念に関して、政治学的に有用な市民(citoyen;civil)社会概念は経済的な市民(bourgeois)社会とは区別して、批判的公衆の活動する公共空間として措定する必要がある。他方で、自発的結社や集団的示威活動が制約を受けていた共産党独裁体制下では、公共空間と知識人・作家・学生・労働者の私的活動のネットワークの存在との関連にまで踏み込んだ探求が必要である。第二に、時期区分に関して、共産党独裁体制を少なくとも、市民社会の抑圧と私的生活の浸食を伴う「全体主義体制」期と、非政治的私的活動の放置と党-国家の政治権力独占との間の暗黙の協定を伴う「ポスト全体主義体制」期とに区分するのみでなく、後者の中で更に、私的活動のネットワークに支えられた公共空間の萌芽的成立を見る「成熟したポスト全体主義体制」とその発達が阻害される「凍結したポスト全体主義体制」とを区分する必要があり、前者は交渉-協定型の民主化へ、後者は崩壊-断絶型の民主化へ帰結する様に、両者の相違は民主化の形態との間に密接な関連path-dependencyを持っている。 現地の研究者のレヴューを受けるために予定していた海外出張は、年度を跨る時期に当たり、科研費からの支出が困難であることが判明したために、私費で賄うことにした。今後は現地の研究者の意見も参考に考察を進めて、本研究の成果の一部を平成11年度中に東北大学法学部の紀要に発表し、同年度秋に予定されている日本政治学会で報告を行う予定でいる(共にエントリー済み)。
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