1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10720038
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
市川 喜崇 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (60250966)
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Keywords | 地方自治 / 革新自治体 / 開発規制 / 都市計画 / 中央-地方関係 |
Research Abstract |
革新自治体期は自治体が様々な分野で先導行政を展開した時代である。その中で,公害規制政策と開発規制政策とでは,その成功の度合を異にしている。前者の場合,自治体が終始政策的主導権を発揮し,国の譲歩を勝ち取り,自治体独自の「上乗せ」規制を認めさせ,政策体系そのものの分権化に成功した。それに対して,後者の場合,一定の成功を収めたものの政策体系そのものの分権化には至らなかった。より具体的にいえば,公害規制の場合のように自治立法=条例という手法によらず,建設省の示唆に従い開発指導要綱による行政指導という方法をとったことである。この手法は,一定の成果をあげたものの,武蔵野市マンション建設指導要綱事件における市の敗訴が物語るように,断固として指導を拒否する業者に対しては有効な方策たりえなかったし,また,後に政府が内需拡大=規制緩和路線に転じると,その指示に逆らえず,要綱を緩和させていった。 筆者の課題は,この両者が成功の度合を異にした理由を明らかにすることである。 現在までのところ,(1)公害規制の場合,革新自治体期以前からすでに東京都などが独自の政策を開発してきたのに対して,開発規制の場合,都市計画権を明治以来国家が独占してきたため,自治体が独自に政策展開する余地が乏しく,そうした政策蓄積の違いが現れた,(2)公害規制は住民の健康に直結する課題でありマスメディアの注目と支持を当てにすることができた,(3)公害規制は主として都道府県レベルの政策であったのに対して,開発規制は主として郊外の中小都市の政策であったため,政策開発や法務能力に違いがあったことなどが,両者の相違をもたらした原因ではないかと考えている。
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